2024/10/06
この度、東京工業大学と東京医科歯科大学の2校が統合・合併され、東京科学大学になることとなりました。なぜ合併されるのか、いつから始まるのか。受験や偏差値への影響は?など様々な観点を実際に今年受験し、無事に合格した経験も含め、簡単にまとめて解説します!!
※ニュース記事やブログ、SNSではなく、公式に発表されている情報をもとにまとめています。
なるべくオフィシャルな情報を用いていますが、中には今年受験した個人的な経験や解釈を含む部分もございますのでそこは予めご了承ください。
引用や参考も多く含まれます。記事の最後に参考文献・引用元もまとめておきます。
(参考文献*1:科学の進歩と – Science Tokyo, Institute of SCIENCE TOKYO)
東京工業大学と東京医科歯科大学
東京工業大学の大学概要
東京工業大学は1881(明治14)年に東京職工学校として設立されました。
日本で初めての国立工業学校として、開国間もない明治初期に産業技術の近代化を推進するため、欧米の先進的な科学技術を取り入れた工業技術教育を開始しました。この設立は、文部省と工部省の技術教育の整備に関する議論と動きの中で成立しました。
創立から140年以上の歴史ある工業大学です。
世界を舞台に科学技術の分野で活躍できる人材の輩出と地球規模で人々の課題を解決する研究成果によって社会に貢献し、長期目標である「世界最高峰の理工系総合大学」の実現を目指しています。
(参考文献*2 Institute of SCIENCE TOKYO,教育,旧東京工業大学, 大学について)
東京医科歯科大学の大学概要
東京医科歯科大学は、
「知と癒しの匠を創造し、人々の幸福に貢献する」
引用元*3:Institute of SCIENCE TOKYO, 旧東京医科歯科大学, 基本理念
という基本理念を掲げており、医療系総合大学として「知と癒しの匠」を創造し、東京のこの地から世界へと翼を広げ、人々の健康と社会の福祉に貢献しています。
東京医科歯科大学では、現在ある最新の医療とそれを裏付ける学問を学ぶことができます。社会で活躍するリーダーとしての人材を輩出することを究極の目的と考え、そのための新しい時代の教育の整備が揃う最先端の大学です。
統合の経緯・理由
統合の経緯
〇2022/08/09 統合に向けた協議開始
2022年8月9日、東京工業大学と東京医科歯科大学は、統合に向けた協議を開始しました。
両大学の学長は、人類と地球環境が直面する課題解決において、両大学が果たす役割が大きいとの認識で一致し、統合による新たな価値創出を目指しています。折しも世間はコロナ禍に見舞われ、2050年のカーボンニュートラル実現が求められる中、グローバルハブとして地球と人類のサステイナビリティに貢献する大学が必要です。
自然科学やリベラルアーツを組み合わせ、社会の課題に貢献する新しい学問分野「Convergence Science」を推進し、自由な協働を実現する創造空間の構築を目指しています。
(参考文献*4:Institute of SCIENCE TOKYO,旧東京工業大学, 東工大ニュース)
他にも日本からGAFAMのような企業や先進的な研究、大学ランキングなどの上位校の少なさなども懸念し、このような大学の合併を考え始めたようです。
同日以降、延べ34回、60時間以上の集中的な協議を行いました。
〇2022/10/14 統合に向けた基本合意書を締結
2022年10月14日についに両大学が統合を決定しました!
地球環境問題、新興・再興感染症、少子高齢社会などの新たな地球規模の課題を解決するために、これまで両大学が積み上げてきた理工学、医歯学に関する数々の実績と知を結集することで、社会に貢献できる大学へとさらに進化し、国際的に卓越した教育研究拠点として社会と共に活力ある未来を切り拓くことを目指します。
(引用元*5:Institute of SCIENCE TOKYO,旧東京医科歯科大学, プレスリリース)
〇2024/10/01 東京科学大学へ
そして実際に2024年10月1日から両校は統合し、東京科学大学となりました。
この後、東京科学大学の概要、いつから、どのようなことが変わるのかなどについて詳しく解説していきます。
東京科学大学の誕生公式記事はこちら(理事長・学長のコメントなど)
統合の背景
- 両校のこれまでの実績
- これまで両大学は、広く理工学及び医歯学に関する学知と技術、それを自在に応用できる人材の育成を通して、産業の発展と医療の進歩を牽引してきた
- 新たな社会課題
- 人類は、これまで想像し得なかった地球環境の悪化、新興・再興感染症、少子高齢化など様々な課題に直面している。そして今後さらに未知の問題が起こる可能性も指摘されている
- 両校への期待
- これら地球規模の課題解決に向けて、大学はその知を結集し、より大きな役割を果たすことが社会から期待されている。
(引用元*6:国立大学法人 東京医科歯科大学・東京工業大学, 「法人統合及び大学統合について」)
これらの実績、社会課題、期待をもって、今回の統合となったようです。
統合の目的・理由
統合の目的は経緯の項目でも説明しましたが、主に以下のような記載があります。
両大学の統合の目的は、両大学のこれまでの伝統と先進性を活かしながら、
統合によってこれまでどの大学も為しえなかった新しい大学のあり方を創出することである。
(引用元*6:国立大学法人 東京医科歯科大学・東京工業大学, 「法人統合及び大学統合について」)
また、今までの両校の形や名前を残したままでなく、新たな大学として、1法人1大学という形で統合した理由は、以下の通りです。
- より大きなシナジー効果
- 新たな医歯理工学のグランドデザインの下での組織、研究者、教育の融合が進み、医歯理工連携による新たな研究教育、人材創出などシナジー創出が容易
- 一から新大学を構築し、大きな改革が可能
- 既存の組織に縛られず、自由でフラットな人間関係で、失敗を恐れずチャレンジできる組織を一から作ることが可能
これらが、統合の主な目的と理由です。
新大学 Science Tokyo (東京科学大学)について
東京科学大学の概要
理念
Mission – Science Tokyoの存在意義
「科学の進歩」と「人々の幸せ」とを探求し、
社会とともに新たな価値を創造するCore values – Science Tokyoの信念・行動指針
- 常識や型にとらわれず、あらゆる知と技術を探求し、自在に融合させる
- ⼀人⼀人の個性や想いを尊重し、豊かな創造の文化を育む
- 自らの在り⽅をつねに問い続け、果敢に変革し続ける
教育理念
「挑戦し続けるフロントランナー」と「知と癒しの匠」としての気概と人間力をあわせ持ち、「科学の進歩」と「人々の幸せ」とを探求し、社会とともに新たな価値を創造する高度専門人材を輩出する。
目指す姿
- 両大学の尖った研究をさらに推進
- 部局等を超えて連携協働し「コンバージェンス・サイエンス」を展開
- 総合知に基づき未来を切り拓く高度専門人材を輩出
- イノベーションを生み出す多様性、包摂性、公平性を持つ文化
(引用元*1:科学の進歩と – Science Tokyo, Institute of SCIENCE TOKYO,Science Tokyoについて, 理念)
Science Tokyo では、「科学の進歩」と「人々の幸せ」の探求という理念をもとに創設されました。
より専門的に、より新しく、大学としてのレベルも高くなるはずです。
ちなみに「コンバージェンス・サイエンス」とは、他分野が協力することで、1+1=2ではなく2以上の成果や研究範囲を生み出すということです。
基本情報
名称
国立大学法人東京科学大学
学院・学部・研究科等
<理工学系>
学部と大学院が一体となった教育スタイル、学院を採用しています。これにより、学士課程と修士課程などの教育カリキュラムが継ぎ目なく学修しやすく設計された教育体系となっています。(学位はそれぞれの課程ごとに授与されます)
旧東京工業大学と同様の分かれ方になっています。
理学院 | 数学系 物理学系 化学系 地球惑星科学系 |
工学院 | 機械系 システム制御系 電気電子系 情報通信系 経営工学系 |
物質理工学院 | 材料系 応用化学系 |
情報理工学院 | 数理・計算科学系 情報工学系 |
生命理工学院 | 生命理工学系 |
環境・社会理工学院 | 建築学系 土木・環境工学系 融合理工学系 社会・人間科学系 イノベーション科学系 技術経営専門職学位課程 |
<医歯学系>
医歯学系は学部と学科により分かれています。旧東京医科歯科大学と同様の分かれ方です。
医学部 | 医学科 保健衛生学科 |
歯学部 | 歯学科 口腔保健学科 |
キャンパス
Science Tokyoには計6つのキャンパスがあります。理工学系ではキャンパスツアーなども行っているようなので、ぜひHP等もご覧ください。
キャンパス名 | 説明 | 住所・アクセス |
---|---|---|
大岡山キャンパス | 理工学系のメインキャンパスです。 面積もかなり大きく、旧東京工業大学のメインキャンパスでもあります。 | 東京都目黒区大岡山2丁目12−1 ・大岡山駅(東急大井町線・目黒線)から正門まで徒歩1分 ・緑ヶ丘駅(東急大井町線)から緑ヶ丘門まで徒歩1分、西門まで徒歩3分 ・石川台駅(東急池上線)から南門まで徒歩7分 |
すずかけ台キャンパス | 旧東京工業大学のキャンパス。 「屋外でも学べるキャンパス」をキーワードに自然と最先端の研究施設との共存を目指しています。 | 神奈川県横浜市緑区長津田町4259 ・すずかけ台駅(東急田園都市線) 徒歩5分 |
田町キャンパス | 旧東京工業大学の都市型キャンパス。 社会人アカデミーや附属高校などがおかれています。 | 東京都港区芝浦3-3-6 ・田町駅(JR山手線・京浜東北線) 徒歩2分 |
湯島キャンパス・駿河台キャンパス | 旧東京医科歯科大学のメインキャンパスです。 湯島キャンパスには研究施設や大学病院が立ち並び、駿河台キャンパスには付置研究所がおかれています。 | 東京都文京区湯島1-5-45 ・御茶ノ水駅(JR・東京メトロ丸ノ内線、千代田線) 徒歩2分 |
国府台キャンパス | 医歯学系の学生の教養教育のための学舎がおかれたキャンパスです。 | 千葉県市川市国府台2-8-1 ・国府台駅(京成線) 徒歩17分、バス6分 ・市川駅(JR) バス10分 |
いつから変わる?
東京医科歯科大学と東京工業大学は2024年10月1日から正式に東京科学大学になります。
両校のHPなども更新がすすんでおり、名前やロゴマークもすでに変更されました。
とはいえ、在校生や直近の受験生に直接影響する部分はすぐには変更しないようです。またこの後の項目でも詳しく解説していきます。
何が変わる?
もちろん2つの大学が統合し、1つになることで分野間の連携や研究の質は向上しますが、その他にも制度や入試についてなどの情報もまとめます。
キャンパスの再開発
主に旧東京工業大学のすずかけ台、大岡山、田町キャンパスを再開発する予定です。
キャンパスイノベーションエコシステム構想として、2031年頃の再開発を予定しています。この構想を東京科学大学の長期目標や理念を達成するための戦略の1つとし、産学官連携のさらなる強化と革新的なキャンパス環境整備を推進します。
ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン
人によって異なるバックグラウンドへの理解を深め、多様性を公正に生かすことができる環境の整備をめざします。
ベビーシッターや育児・介護支援、様々なガイドライン・研修制度など幅広く制度の整備をしていきます。
また、系(理工学系、医歯学系)によってもそれぞれの方針を設けておりますので、ぜひご確認ください。公式サイトはこちら!
在校生の扱い
在校生は、統合日前日までは旧大学の生徒として扱われますが、統合日からは新大学の生徒となります。
卒業や修了は新大学での卒業・修了となります。そのため、学位も新大学の名称で発行されます。しかし、何らかの形で旧大学の名称も記載ができる方向で検討が進んでいるそうです。
(参考文献*7:Institute of SCIENCE TOKYO,旧東京工業大学, 大学院で学びたい方, 新着入試情報)
入試について
受験生の方は特に気になるのではないでしょうか。
安心してください。当面の間、受験の形式を変更することはないそうです。新大学当初は旧大学と同様の方法で入学者選抜試験が行われます。
今後、入試方法の変更がある可能性はもちろんありますが、変更がある場合は速やかに周知されます。特に学士課程の入試の準備に大きく影響が出るような変更がある場合は、2年程度前には周知されるそうです。
少なくとも2年以内の入試には影響は少なそうですね。
私も先日(2024/08)の大学院入試を受験しましたが、旧大学の募集に則り、例年通りの対策を行って無事に合格しました。不安なこともあるかと思いますが、今ある確定情報で戦う以外に道はありません。例年通りの対策を着実に行っていきましょう。
今年度の東工大大学院入試についての記事はこちら👇
今後の詳しい入試情報は新大学のHPの入試情報にて更新されていくそうです。受験を検討されている方はこまめにチェックしておきましょう。大学入試説明会などのイベントもあるそうなので、ぜひご参照ください。
(参考文献*7:Institute of SCIENCE TOKYO,旧東京工業大学, 大学院で学びたい方, 新着入試情報)
まとめ
いかがだったでしょうか。まだまだ不確定情報やこれから更新されていく情報もたくさんあるでしょうが、ひとまず新大学創設のタイミングで記事を執筆してみました。お役に立てれば幸いです。
最後に、大学統合の理由や影響について簡単にまとめて終わりたいと思います。
「科学の進歩」と「人々の幸せ」の探求という理念をもとに創設された「東京科学大学」。
新たな社会課題が多い今、理工学系と医歯学系のシナジーを活かし、より先進的な研究により社会に貢献していく必要があるとの見解により統合が実現しました。「コンバージェンス・サイエンス」によって、世界でもトップクラスの研究を行います。
大学統合によって、研究においても内部の制度においても革新的な改革を行うことが可能となりました。ダイバーシティに対応した制度の充実やキャンパスの再開発も行っていきます。
また、旧大学の在校生はそのまま新大学の学生として、学位も新大学の名称で発行されます。入試に関しては少なくとも2年間は旧大学の入試形態と同様の試験が行われます。変更がある場合は、2年程度前には周知するようです。
これからの東京科学大学の、そして日本、世界の技術の発展が非常に楽しみですね☺。
最後まで読んでいただきありがとうございました!!!
参考文献・引用元
*1・・・科学の進歩と – Science Tokyo, Institute of SCIENCE TOKYO, https://www.isct.ac.jp/ja, 閲覧日 2024/10/06
*2・・・Institute of SCIENCE TOKYO,教育,旧東京工業大学, 大学について,https://www.titech.ac.jp/about, 閲覧日 2024/10/06
*3・・・Institute of SCIENCE TOKYO, 旧東京医科歯科大学, 基本理念,https://www.tmd.ac.jp/outline/idee/idee/,閲覧日 2024/10/06
*4・・・Institute of SCIENCE TOKYO,旧東京工業大学, 東工大ニュース,「国立大学法人東京工業大学と国立大学法人東京医科歯科大学の統合に向けた協議を開始」,https://www.titech.ac.jp/news/2022/064662,閲覧日 2024/10/06
*5・・・Institute of SCIENCE TOKYO, 旧東京医科歯科大学, プレスリリース, 「国立大学法人東京医科歯科大学と国立大学法人東京工業大学の統合に向けた基本合意書を締結」,https://www.tmd.ac.jp/press-release/20221014-2/, 閲覧日 2024/10/08
*6・・・国立大学法人 東京医科歯科大学・東京工業大学, 「法人統合及び大学統合について」,https://suna-log.com/wp-content/uploads/2024/10/58253_ext_04_6.pdf,公開日 2022/10/14, 閲覧日 2024/10/08
*7・・・Institute of SCIENCE TOKYO,旧東京工業大学, 大学院で学びたい方, 新着入試情報,「東京医科歯科大学との大学統合(新大学「東京科学大学(仮称)」設置)に伴う取り扱い」,https://www.titech.ac.jp/admissions/prospective-students/news/2023/066479
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