国際協力とは、国を越えて人々が手を取り合い、世界中の課題解決に向けて協力する取り組みです。 経済支援や技術協力、災害支援など、様々な形で行われるこの活動は、国際社会において平和と発展を促進する重要な役割を果たしています。この記事では、国際協力の基本的な意味を解説しながら、その歴史を振り返り、現代における国際協力の意義について考えていきます。
私も以前、国際協力を行う法人に4年間所属し、代表をやっておりました。そこでは途上国への教育支援を行っていましたが、団体に入った当初、自分たちの国際協力は適切なのか、そもそもなぜ国際協力をするのか、考え込んでいたこともありました。
そのように、国際協力に興味がある方、携わっている方に向けて、国際協力をその歴史からひも解いていきたいと思います。この記事が少しでもお役に立てば嬉しいです!
国際協力とは?
国際協力とは、国境を越えて国家間や地域間で行われる協力活動のことを指します。 その目的は、経済的な支援や技術提供、人道的な救援活動を通じて、開発途上国や困難な状況にある国々を支援し、世界全体の平和と安定を促進することです。具体的には、教育、医療、インフラ整備、環境保護など、様々な分野での支援が含まれ、政府や国際機関、NGOなどが主体となって活動しています。国際協力は、持続可能な開発目標(SDGs)の達成に向けた重要な手段であり、地球規模での課題解決に欠かせない取り組みです。(参考文献*1,3)
開発協力の意義
世界には195ヵ国以上の国が存在しており、そのうち150ヵ国以上が開発途上国と分類されています。
しかし、グローバル化が進み、環境破壊や感染症の蔓延、紛争問題の深刻化といった問題は世界全体を脅かし、決して開発途上国だけの問題ではありません。
国際社会全体の平和と安定、発展のために、開発途上国・地域の人々を支援することが重要です。
開発協力の目的は、
国際社会の平和と安定、繁栄の確保に、より一層積極的に貢献すること
望ましい国際環境を整えることで、廻り廻って自分たちの利益にもなるのです。よく言われる国際協力の恩送りのシステムですね。
ただ”途上国だから”支援するわけではない。国際協力をするときは、それを覚えておきましょう。経済、技術、教育などの途上国への支援だけでなく、日本でもよくある災害の支援などもあります。
開発途上国に関する記事はまた別で執筆しますのでそちらもご覧ください。
環境保全
国際協力における環境保全は、地球規模の課題である環境問題に取り組むために、各国や国際機関が協力して行う重要な活動です。気候変動、森林破壊、生物多様性の喪失など、環境問題は一国だけで解決できるものではなく、国境を越えた取り組みが必要とされています。国連の「持続可能な開発目標(SDGs)」でも、気候変動対策や海洋資源の保全、陸上生態系の保護が主要な目標として掲げられており、これに基づき、各国は技術協力や資金援助を通じて、環境保全に貢献しています。
具体的な国際協力の事例としては、再生可能エネルギーの導入支援や森林の再生、持続可能な農業技術の提供などが挙げられます。また、途上国における環境保全活動の推進には、技術支援や人材育成が不可欠です。例えば、日本は「二国間クレジット制度」やODA(政府開発援助)を通じて、温室効果ガスの削減技術を各国に移転し、持続可能なエネルギー利用を支援しています。このような国際協力は、地球環境の保全だけでなく、長期的には各国の経済や社会の持続可能な発展にも寄与するものです。
平和維持
国際協力における平和維持活動は、紛争地域などでの安定と秩序を取り戻すため、国際社会が協力して行う重要な取り組みです。国連平和維持活動(PKO)はその代表的な例で、停戦監視や武装解除、民間人の保護、紛争後の復興支援など、幅広い分野で活動が展開されています。こうした活動は、紛争が長引く地域における暴力の拡大を防ぎ、対立する勢力間での信頼構築を目指します。また、平和的な解決を促進するために、中立的な立場で関与することが求められ、紛争の当事者が同意する形で展開されることが原則です。
それだけでなく、民間や我々一般の人にも平和に対してできることはあります。毎年広島で開かれる平和祈念式典への参加をはじめ、平和について考える機会を取り続けること、発信し続けることができます。平和維持において、仮に現時点で紛争や戦争がなかったとしても、「過ちは繰り返さない」という誓いを守り続ける意識が非常に重要です。
国際協力の歴史
歴史を振り返る ~過去から現在まで~
国際協力の歴史は、第二次世界大戦後の復興期から始まり、現代に至るまで大きな発展を遂げてきました。今回は、その歴史を簡単に振り返りながら、現在の国際協力の動向について考えてみましょう。
(参考文献*2)
国際協力の起源
国際協力のルーツは19世紀初めにさかのぼります。当時、欧米諸国ではキリスト教団体による慈善活動や救済活動が行われていました。しかし、現在のような形での国際協力が本格的に始まったのは、第二次世界大戦後です。戦後の世界は大きく変わり、国際社会が協力して復興を目指す流れが生まれました。
戦後復興と日本の国際協力の始まり
1954年、日本はコロンボ・プランに加盟し、技術協力を開始しました。これが日本の国際協力の第一歩です。同時に、日本は戦後賠償としてアジア諸国への経済支援も行いました。これにより、日本は国際社会における信頼を築き、国際協力の舞台に立つことになったのです。
1960〜70年代:独立国家と国際協力の拡大
1960年代から1970年代にかけて、アジアやアフリカで多くの国が独立を果たしました。これに伴い、国際協力の分野も広がり、環境問題や人権問題など新たな課題にも取り組むようになりました。また、NGO(非政府組織)の活動も活発化し、人道支援や人材派遣など、現場レベルでの協力も進展しました。
1980〜90年代:日本のODAと国際的な躍進
1980年代後半から1990年代にかけて、日本の国際協力は大きく飛躍しました。この時期、日本の政府開発援助(ODA)は世界でもトップクラスの規模を誇り、特に1991年からの10年間は世界最大の援助国となりました。ODAの量的な拡大に加えて、支援の質の向上も図られ、国際的な信頼をさらに強固なものとしました。
2000年代以降:持続可能な開発へのシフト
21世紀に入ると、国際協力の焦点は「持続可能な開発」へと移行しました。特に、2015年に国連で採択された「持続可能な開発目標(SDGs)」が国際協力の新たな指針となり、環境保護や貧困削減といった地球規模の課題に対する取り組みが強化されました。
現在の国際協力
現代の国際協力は、教育、保健、水と衛生、運輸、エネルギー、農業、環境、防災、ジェンダー平等、平和構築など、非常に多岐にわたる分野で行われています。特に、国際的なコミュニケーションの場においては、言語の壁を越えた多言語対応が重要な役割を果たしています。翻訳や通訳のスキルが国際協力を円滑に進めるために不可欠となっているのです。
未来の国際協力に向けて
国際協力の歴史は、世界の変化と共に進化を続けています。これからも新たな課題が生まれ、その対応策が模索されることでしょう。持続可能な発展を目指し、国際社会が一丸となって取り組むことが求められます。
日本もかつては被支援国だった
日本が受けてきた国際支援の歴史は、戦後の復興期に遡ります。この経験は、後の日本の国際協力政策に大きな影響を与えました。(参考文献*2,3)
ガリオア・エロア資金:日本復興の基盤
アメリカ政府による支援の中核をなしたのが、ガリオア・エロア資金です。
- ガリオア(GARIOA): 占領地救済政府基金
- エロア(EROA): 占領地経済復興基金
これらの資金は1946年から1951年にかけて提供され、総額は約18億ドル(現在の価値で約12兆円)に達しました。このうち13億ドル(約9.5兆円相当)が無償援助として贈与されました。
世界銀行からの融資:インフラ整備に
世界銀行は日本の復興に大きく貢献しました。
- 融資総額: 8億6000万ドル(現在の価値で約6兆円)
- 使途: 道路、ダム、新幹線などのインフラ整備
- 返済完了: 1990年7月
この融資により、日本は急速な経済発展を遂げることができました。
ユニセフによる支援
国連児童基金(ユニセフ)も戦後の日本の子どもたちに多大な支援を行いました。
- 支援総額: 約65億円(現在の価値で約1300億円)
- 成果: 子どもたちの衛生状態の改善、栄養失調や疾病の減少
NGOによる支援
ララ物資
Licensed Agencies for Relief in Asia (LARA) による支援です。
- 期間: 1946年から1952年
- 支援物資量: 16,207.89トン
- 内容: 食料品、衣料品、学用品、医療品、時には乳牛やヤギなど
- 特筆すべき点: 支援物資の20%は日系人によるものでした
ケア物資
アメリカのNGO「ケア」による支援です。
- 期間: 1948年から1955年
- 対象: 小中学生1500万人
- 内容: 食料品や日用品など
支援の影響と日本の国際協力への展開
これ以外にも災害支援など、近年も日本はたくさんの支援を受けています。これらの支援を受けた経験は、日本が後に国際協力の分野で重要な役割を果たすきっかけとなりました。1954年にコロンボ・プランに加盟し、技術協力を開始したのを皮切りに、日本は徐々に援助国としての地位を確立していきました。1991年から2000年までの10年間、日本は世界最大の援助国となり、2023年もODA世界第3位の援助国としての地位を維持しています。この歴史は、支援を受けた国が後に支援する側に回るという、国際協力の好循環を示す好例となっています。日本の経験は、国際社会における相互扶助の重要性を示すとともに、効果的な支援が受援国の発展に大きく寄与することを実証しています。
まとめ
いかがだったでしょうか。
今回は、国際協力の歴史を振り返り、国際協力の意義や本質をまとめました。ただ途上国だから、といいた理由で支援するわけではなく、国際社会全体の利益になるように、すべての国が協力し合うことがより良い世界に繋がります。
日本もかつて多くの支援を受け、戦後復興を果たし、今では世界でも最大級の支援国になったように、効果的な国際支援、協力が国際社会の発展に大きく繋がることでしょう。
最後まで読んでいただきありがとうございました!!国際協力の歴史や意義についての知識と理解が、この記事ですこしでも深まっていたら嬉しいです!
国際協力が実際に誰によってどのように行われているのかなどの具体的な記事も執筆予定ですのでぜひご覧ください。
参考文献
*1・・・JICA/国際協力とは/https://www.jica.go.jp/cooperation/know/about/index.html/閲覧日 2024.10.16
*2・・・World Vision/国際協力とは?なぜ国際協力をするの?/https://www.worldvision.jp/recruit/carrier_01.html#d0e9d87eb78fa54e47cd213ca7606442/閲覧日 2024.10.16
*3・・・外務省/外交政策/ODA(政府開発援助)/https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/index.html/閲覧日 2024.10.16
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